
人は過去から自由になれるのか? ー「しなやかさ」について
人生には様々な困難がつきもので、困難の度合いも人によってそれぞれです。私たちはそれでもなんとか自分の出来る範囲でベストを尽くしながら、時には落ち 込み、時には勇気を得ながら生きています。一方、マスコミで心理学の形を借りて紹介される一部の情報を読んでいると、「私たちは生まれ育った環境の犠牲者 で、ある親や環境の元で育つと、必ずある性格的特徴を持つようになる」と何となく信じこまされてしまったりします。確かに自分の受けた影響に無意識なまま でいると、知らない間に親と同じパターンを自分の子供にも繰り返したり、物事に対していつも同じような反応の仕方をしたりする、ということがあるのも事実 です。
それでは私たちは生まれ育った環境の呪縛から抜けることはできないのでしょうか?私の専門の一つである臨床心理学の世界では、研究というと問題に焦点を当てたものが多いのですが、幸いなことに最近では、「人間の強さ」をテーマにした研究も見られるようになりました。
例えば、アメリカの心理学者ウォーリン博士は、アルコール依存症の両親の元に育った人の中で、アルコール依存に「ならなかった」人の特徴を調べる、という パイオニア的な研究を行いました。(ところで、親と同じような道をたどらなかった人は、実は全体の85%にものぼるのです!)博士はこの85%の人たちが どのように人生の困難に対処したかを調査し、その特徴を抽出しました。そして共通して見られたこれらの特徴を、「しなやかさ(resilience)」と いう語で括りました。しなやかさとは、困難な状況に対して、視点を変えたり、自分の限界を広げたり、ユーモアの感覚を思い出したりしながら対処していく能力のことです。また、ここで大切なのは、しなやかさは誰もが持っているもので、自覚を高めたり、練習することによってさらに培うことができるものだということです。
また、アメリカの細胞生物学者のブルース・リプトン博士は、細胞の研究をする中で、一般に信じられていることとは裏腹に「遺伝子やDNAが必ずしも身体の 特徴を決めるのではない」「視点や信念を変えることで、遺伝子コードを書き換えることができる」という驚くべき結果を得ました。これはとても意義深いこと で、私たちには自分の人生の方向を変える潜在的な力がある、ということを意味します。リプトン博士はまた、自動操縦状態にいる限り、私たちの思考の七割は どちらかというと否定的だったりあまり意味のない内容を繰り返しているだけ、と言います。私も反省するところが多いですが、自動操縦状態を抜けて、自覚を 高める重要性をあらためて思い知らされます。
しなやかさは、筋肉と同じで、自分が慣れているよりも少しだけストレッチすることでより強くなると言われています。このサイトや私が随時行っているワークショップでも、自覚を高めたり、自分の限界を広げる方法をたくさんご紹介していますので、ぜひご利用ください。
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