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自分の力に気づく           

 
  
私たちの誰もがある状況や人間関係や集団の中で、自分を被害者のように感じることがあるのではないでしょうか。それは相手が社会的な力を行使してくるとき や、自分が集団の中で少数派の立場にいる時であったりします。そのような時に傷つきや怒りに苛まれることは自然なだけでなく、ある程度は大切だったりもし ます。また、そのような立場にある人たちに対して、社会的なサポートや理解が必要なことは言うまでもありません。

 一方、被害者意識を 持っているときには、自分を無力な存在のみと見なしがちですし、周囲の人も「かわいそうな被害者」として接するということもあります。しかし、ある文脈の 中でどんなに「弱い」立場にある人でも、必ず別の文脈では力を持っています。例えば一番か弱い立場にいそうな赤ちゃんが、どんなに強い生命力を持っている か、また泣き声や笑い声一つでどんなに周りの大人に大きな影響を与えるか、ということを思い起こしてみてください。また、集団の中で少数派に属する人たち は、ふだん苦労している分、人生について深く考える機会が多くなり、社会を変えるようなユニークなアイディアを持っていることも多いものです。ですから、 自分や他者を「かわいそうな被害者」としてのみ見なすことで、別の形で存在する可能性や力を見落とすようなことがあっては、本人にとっても社会全体にとっ ても残念だし、もったいないことだと思います。

 ここで気をつけなければならないのは、自分の持っている力を認めることと、単に反抗した り復讐心に燃えたりするのとは似て非なるものだということです。反抗、反発することも、過程の一部として必要かもしれませんが、そのような時には、まだ 「被害者/加害者」モードから抜けきっているとは言えません。それどころか、いつのまにか嫌だと思っていた相手とそっくりの態度をとっていることも多いの です。自分のことを親や世間の抑圧の犠牲者だと思っているティーンエイジャーが、学校で後輩に対してけっこう強圧的な態度で接していたりするのがその良い 例です。

 このように、被害者/加害者というのはコインの裏表のようなもので、一方の立場に執着しているときには、知らず知らずのうちに もう一方の側になる可能性も高いようです。それは、ひとつには、この二つがいわば同じ意識のレベルから派生しているためで、このサイクルから抜け 出すには、自覚のレベルを一段階高めるしか方法がありません。それは具体的には、被害者と加害者の両方の立場を、慈悲心を持って眺める「長老」のような存 在を自分の中に培っていくこと、と言えるかもしれません。いきなり達観した長老のようになるのには無理があるとしても、十分に惨めさや無力感や怒りを感じ た後は、相手の立場に立ったり、全体を眺めたりということを少しずつ意識していくということを始めてみましょう。


 エクササイズ: 長老の視点に立ってみる

1) 自分の知っている人の中で、大きな慈悲心を持っているような人−−自分が持っているすべての部分、地球上のすべての人、すべての物事を、とらわれのない心 で受け入れてくれるような人物像を思い浮かべてください(直接知っている人でなくても、想像上の人物、歴史上の人物、有名人などでも良いですし、人間でな くても自然や大地、宇宙のイメージでもよいでしょう)。

2) ゆっくりと普段の自分を脇に置いて、徐々にその人物像に「変身」していってみてください。自分がその人だとすると、どのように座ったり、立ったり、歩いた りするでしょう。呼吸の仕方や体の感覚はどうですか?またどのような心の持ち方をしているでしょうか?自分がその人物像となって、この世のすべての人、す べての事象を深い慈悲心で眺めてみてください。その視点からは世界はどのように見えるでしょうか?十分にその感じを味わってください。

3) その視点を保ったまま、一方の手を普段の自分、反対側の手を普段の自分を抑圧してくる存在(人、権威、組織、状況など)であると想像してみてください。そ して、その「長老」の視点からその二つの立場を眺めやってください。それぞれの立場はその視点からどう見えてくるでしょうか。長老の立場から、二つの立場 に対して何かアドバイスはあるでしょうか?


以下の本は、被害者/加害者の二元論を超越していくことや、私たち一人一人が長老のような立場を培うことがいかに世界の平和につながるかということについて書かれている、葛藤解決の必読書です。

 『紛争の心理学』(アーノルド・ミンデル著、講談社現代新書)



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