
人生のサーファーになる
「人 生で何かが欠けているような気がするなー」「不幸というわけではないんだけど、幸せというわけでもないし。。」「〜だったらいいのに」「〜さえあれば幸せ になれるのに」私たちの多くは、日常の中で、このようにごく軽い落ち込みを慢性的に感じています。これは気をつけてみてみないと見落としてしまうほど微妙 なもので、通常は「落ち込み」とも自覚しないのが普通です。しかし、気づかずにやり過ごしていると、なんとなく低調な感じが続いたり、ある種の食べ物、意 識状態を変えるための物質(アルコール、たばこ、コーヒー、お菓子など)、ある種の行為(買い物、賭け事など)、関係性などに一時的に逃避したりすることになりま す。また、ハイな気分と落ち込みという気分の上り下がりに振り回されるということもあるでしょう。
世間ではなんでも「ポジティブにとら えよう」という風潮がありますが、「いつでも元気で前向きで生産的で」というのも人間のあり方として無理があるように思います。それよりも、ハイもローも 人生の一部と受け入れて、波乗りのように自覚的に、柔軟に上がり下がりするというのはどうでしょう。もしかしたら、ただ無自覚に気分の上り下がりに振り回 されていた時とは違う何かが見えてくるかもしれません。「え?低調なのが良いわけないじゃない」と思われるかもしれませんが、 良くないものと思い込んでいるので、探索したことがないだけということもあります。
電 話カウンセリングのクライエントのBさんは子育て、仕事、勉強、友人との付き合いなどでいつも忙しく走り回っている女性です。その彼女があるときめずらし くひどい風邪をひき、高熱を出してダウンしてしまいました。それでも電話セッションの予約の時間に無理をして電話をかけてきました。普段通りに話そうとす るのですが、いつもと違いぼーっとしてゆっくりな口調です。無理して話そうとするのではなく、今実際に自分に起きている体験に気持ちを向けてもらうと、ぼ んやりとして雲の中にいるようだ、と言います。さらにさぐっていくと、繭の中にいるようで、外の世界から守られている感じがする、とのことです。
ふだんのBさんは、周りの要求に応じようとして忙しくなる傾向にありますので、この繭の中にいるような感じは、彼女にとって大切な意味を持っていることが わかります。ゆっくり休んだほうがよいのでセッションはここで切り上げましたが、この「ゆったりと自分とともにいる感じ」にもっと親しんでいって、他人と いる時でもこの感覚が保てるようになることが、彼女の次のステップとなるでしょう。
私たちは「熱を出している状態はよくない」「早く元気にならなければ」「体調が悪くても相手とふだん通りに話さなければいけない」などという思いに縛られ がちです。それも当然の反応なのですが、それでもそのような先入観をいったん脇に置いて、一見不快な体験でも「実際はどんな感じだろう」とあらためて気持 ちを向けてみると、上の例のように大切なことが見つかることもあるのです。
また、気分が良いときにはそこに十分に留まって、その気持ち を味わっているかというと、実はそうでもないことも多いのは興味深いことです。例えば道ばたで「いいな、きれいだな」と思うような花を見かけたとしましょう。 そんなとき皆さんはどうしますか?立ち止まってその花のにおいをかいだり、もっと良くみてみたりすることもあるでしょうが、どこかに目的地に向かって歩い ているときなどは特に、そのまま通り過ぎてしまうことも多いのではないでしょうか。次回何かに惹かれるようなことがあったら、ぜひ立ち止まってそれを十分 に体験してみてください。たとえば花だったら、その花のどこに気持ちを惹かれているのでしょうか?もしも「明るく輝くような黄色」だとしたら、その輝く黄 色をもっとよく見たり、体感してみましょう。
このように、普段の自動モードから少しだけ抜け出して想像力を使うだけで、日常のちょっとした瞬間が喜びに満ちた体験に変わるかもしれません。
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