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プライドと自己変容


私 たちのエネルギーの大半は自尊心を保つために消費されている、というのがドン・ファンの論だった。それは、私たちが際限なく自分の体裁を気にすることを見 れば明らかだ。ほめられているかいないか、好かれているかいないか、認められているかいないか、とまったくきりがない。彼は、もし私たちがその自尊心をい くらかでも手放せれば驚くべきことがふたつ起きる、といった。
ひとつは、自分が偉大であるという幻想を保っているエネルギーを解放することができる。もうひとつは、第二の注意力に入るために充分なエネルギーを供給することができ、宇宙の本物の偉大さをかいま見ることができるのだ。

カルロス・カスタネダ著『夢見の技法 - 超意識への飛翔 - 』


  人類学者カルロス・カスタネダが自分の師であるメキシコのヤキ・インディオの呪術師ドン・ファン・マテュスからの教えを綴った(それはフィクションともノ ンフィクションとも言われていますが)数々の著作には、目覚めて生きるための知恵が満載されています。その中で時々言及される言葉に「自尊心(self- importance・・・プライドと訳したほうが日本語のニュアンスに近いかもしれません)」というものがあります。カスタネダの言動を見て師のドン・ ファンが笑いながら指摘する言葉ですが、ドン・ファンによれば、侮辱されたように感じる時、惨めに感じる時、何かを得意に感じる時などはいつでも小さなエ ゴの体裁を保つことに忙しくなっている瞬間で、そのために自己解放など大切なことに使えるはずのエネルギーを無駄遣いしているというのです。私もかなり耳 が痛い話です。 

 現代人のほとんどは、ドン・ファンが言うように、エゴの体裁を保つのに多くのエネルギーを費やしていると言えるでしょ う。「大切な自分」が傷ついて怒ったり、守りに入ったり、心配したり。。。それでは、これが真に自分を大切にするというのとどう違うかというと、プライド を守ろうとしている時には、かなり感情的に忙しくなっているようです。私自身、自分の頭の中に自動的に起きる台詞を聞いてみると、「私のやり方は皆に気に入っても らえたかしら」「あの人がこんなことをするので傷ついた」「性格的なことについて指摘されたけど、決して認めたくない」という具合に、本当に「私」中心の ドラマが展開していて笑ってしまいます。この小さなエゴから完全に自由になるにはまだ相当かかりそうですが、このことに自覚的になってからは少しづつ自分 の中で楽になっていったり、人との関係の持ち方も変わってきたように思います。

 皆さんは、人から非難されたり、認めがたいことを指摘さ れた時、どのように反応しますか?このような時は、言うほうも言われるほうも、言われた内容を否定的な意味でとらえているため、心の中で葛藤が起き、まさ にエゴがプライドを守ろうとして忙しく働き始める瞬間です。防衛的になったり、怒ったり、傷ついたり、または相手と同じに自分を責めて落ち込んだり。。。 このような時にはどうしたらよいのでしょうか?

 興味深いことに、非難の内容を注意深く聞いてみると、1%ほどであっても何らかの真実が 含まれていることがほとんどです。そして、これは逆説的ですが、「非難されたことを、もっとやった方がいい」という場合もあるのです(もちろん、形は少し 変えなければなりません)。例えば、相手に「少しいい方が高飛車だ」と指摘されたとしましょう。通常私たちは「あまり強く自分の意見を言わないほうがよ い」「和を大切にしたほうがよい」という信念を持っていますので、高飛車と言われてしまうと、悪いことをしたように思い、自分を抑えようとしたり、くしゅ んとしてしまったりします。それでは、そこに1%でも真実があったと仮定したら、なぜ自分の言い方が相手に少しでも高飛車に聞こえたのでしょう?もしかし たら、ふだんから少し自分に自信がないということがあり、それを補うために知らず知らずに声のトーンがきつくなっていたのかもしれません。または、言った 内容を本当に大切に思っているが、相手にきちんと受けとめてもらえないのでは、と怖れる気持ちがあり、声が大きくなってしまったのかもしれません。それに 気づいて本当に自分に自信が持てたとき、自分の意見を自然にしっかりとした調子で言えるようになり、相手を圧倒するような言い方ではなくなるでしょう。つ まり、相手の批判は、「(高飛車ではなく)もっとしっかりと言う」という新しいあり方への糸口かもしれないのです。

 もしも、大切な人た ちとの関係を保つだけでなく、関係性の中でお互い成長していきたいと思ったら、何かあったときに自動的に反応するだけでなく、ぐっと踏みとどまることが必 要となってきます。以下にご紹介するのは、とてもシンプルなステップですが、関係性を深めるためにとても効果的なエクササイズです。

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エクササイズ; プライドを越えて

もしも誰かに非難されたり、自分が受け入れがたいことを指摘されたら;

1)自分の自動的な反応や、自分に味方したくなる気持ちをいったん認めて大切にする。

2)深呼吸する

3)非難の内容に1%でも真実が含まれていないかみてみる。

4)もし何か見つかったら「あなたの言う通り、私にはそういう部分があります」と伝えてみる。

この時、状況と自分の準備状態によっては、色々な言い方になると思います。たとえば:
「言ってもらったのとは少し違う形だけど、たしかに私にはそういうところがあります」
「本当にその通りですね。不快な思いをさせたらごめんなさい」
「本当にその通りです。それどころか、もっと自覚的にそういう部分を出していかなければ、と思います。そのことに気づかせてもらって感謝しています」
などなど。。

  たいていの場合、上の4つのステップを行っただけで、関係性の緊張状態が解けるでしょう。それだけでなく、これをしたことによって、相手の人も自動的な反 応のサイクルを越えることを一緒に始めてくれるかもしれません。私たちのほとんどは、正直なところを相手に伝えたり、関係性を深めることを教わってきてい ません。しかし私の個人的な体験やカウンセリングに来られるクライエントの方の体験からも、葛藤の瞬間に少しだけ踏みとどまることで、日頃の人間関係がこ んなにも豊かになるのか、と目を開かれることも多いのです。


『アウェアネスの道具箱』リスト